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PPAP商標登録横取り問題|真相は別なところにある!元弁理士による本当の思惑とは

こんにちは。無職から派遣看護助手に転職した、ままるです。

昨年、You Tubeで世界的な大ブレイクを果たした「ピコ太郎」氏ですが

ピコ太郎(PIKOTARO)オフィシャルサイト

最近では、そのブレイクのきっかけとなった楽曲「PPAP」の商標権についてのニュースが世間を騒がせています。

PPAP:大阪の会社が商標出願…ピコ太郎さんとは無関係 - 毎日新聞

「PPAP」や「ペンパイナッポーアッポーペン」をピコ太郎氏の所属事務所の親会社である「エイベックス・グループ・ホールディングス」より早く、ピコ太郎氏やエイベックスとはまったく無関係の「ベストライセンス社」によって商標出願されていた、というニュースですね。

「PPAPの商標権横取り」

として大きなニュースとなっているので、ご存知の方も多いと思います。

ピコ太郎氏は今後、本当にPPAPを歌えなくなるのでしょうか?

この事件の真相は、実はもっと別なところにあります。

今日はそんなお話です。

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ピコ太郎(PIKOTARO)オフィシャルサイト

そもそも商標登録とは?

そもそも商標とは、モノやサービスを作った人や団体が、他者が作ったものと明確に区分する為に、特許庁に出願しその名称などの出所を明確にすることです。

ものすごく簡単に言うと

「パクられない為に特許庁のお墨付きをもらってオフィシャルにすること」

ですね。

 

僕は長年商売をやっていた過程で、たくさんのモノやサービスを生み出してきました。

それゆえに商標登録も何度か出願して、特許庁に登録されています。

僕らの身の回りは、意外なほどに登録商標に囲まれています。

身近な商標登録の例

有名なところで言うと

「宅急便」

これはヤマト運輸登録商標です。

ですので佐川急便やその他の宅配業者は「宅急便」という言葉は使用出来ません。

「宅配便」というのが一般名称ですね。

「コカコーラ」

も有名な登録商標です。

似たような商品は「コーラ」という名称は使っていますが「コカコーラ」は「コカコーラ社」独自の名称になります。

意外なところでは

「介護」

という言葉も、実は登録商標です。

「介助」と「看護」という言葉しか無かった1980年代に、来るべき高齢化社会にその言葉はイマイチしっくりこない、という理由で、ある会社が造語として

「介護」

という言葉を考えて、登録商標出願し特許庁がこれを認めています。

「介護」という言葉に関しては、出願者が広く世間で使って欲しい、という考えから一般用語になりました。

登録商標には、このようなケースもあるんですね。

商標登録出願が早い者勝ちの理由

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今回の騒動の中心人物である「ベストライセンス社社長」の上田育弘氏は、元弁理士だそうです。

弁理士とは、特許や商標登録を扱う専門家ですが、僕からすると今回の彼の行動は、非常に理解に苦しむ行動にしか見えません。

確かに商標登録は「先願」という考え方が、原則として存在します。

ビジネスは先手必勝です。

今日思いついたアイディアも、明日誰か別の人が考えないとも限りません。

そもそも特許や商標登録は「公正な競争」の大原則を守る為の法令です。

資本主義社会の中で、人の頭の中からアイディアが生まれ、それをビジネスとして展開して行く。

A社が思いついて作った商品と、まったく同じ内容の商品をB社が思いつかないとは、100%言い切れません。

どちらかが「パクった、パクらない」の論争になった時、その公正な裁きの基準になるのは「どちらが先に具現化したものなのか」という点です。

その基準になるのが「商標登録」です。

そのために、商標登録は「早い者勝ち」という「先願」が原則化しているわけで、世間で流行し始めたワードを、その商品やサービスの開発や運営とまったく無関係な第三者が先願してその権利を横取りするためのものではありません。

こんな基本的なことは、弁理士であれば当然知らないはずはありません。

では「ベストライセンス社」の本当のビジネスモデルは、いったいどこにあるのでしょうか?

PPAPを先願したベストライセンス社の本当の思惑

確かに商標登録は「先願」したものから優先的に特許庁に審査されます。

しかし、必ず審査に通るとは限りません。

むしろ今回のケースのように、開発や運営とはまったく無関係の第三者が先願した場合、特許庁が審査を通す事はほとんど無いと言っていいでしょう。

上田育弘氏は元弁理士です。

こんな基本的なことを知らないはずはありません。

上田氏の本当の目的は

「商標を特許庁の審査に通す」

ことでは無いのです。

商標登録の出願は、特許庁がその審査に入るまで半年程度かかります。

さらに特許庁が「OK」を出すまでにさらに半年くらいは掛かります。

つまり「商標出願」しても、それが特許庁に認められるまでに最低一年程度の時間は掛かるのが一般的です。

僕が商標出願した時は、特許庁から何度か突き返され、その度に修正、再出願という手続きを行って、審査が通るまで2年近く掛かったケースもありました。

上田氏は、このタイムラグに目を付けたんですね。

商標登録は「先願」が原則です。

特許庁のホームページで確認すると、現在「申請」されている状態が一目で確認出来ます。

世間の多くのひとは

「自分たちより早く出願されている!これは大変だ!」

となるわけです。

そこで動揺している会社や個人に、上田氏はその商標権やライセンスを「お金」という形で譲っているんですね。

実際は、特許庁に認められている前の段階である「出願」にすぎないのですが、商標や特許の知識に乏しい人であれば、上田氏にお金を払って上田氏の出願を取り下げてもらうという事が起こる事もあると思います。

テレビのインタビューの中で、上田氏は

「合法のまっとうなビジネスだ」

というようなことをドヤ顔で言っていますが、やっていることは限りなく詐欺に近いと言わざるを得ません。

しかし、さすが元弁理士だけあって、上田氏がやっていることを詐欺として立件することはおそらく不可能です。

法の隙間を突いた絶妙な行為ですが、僕レベルの知識でも分かるほど薄っぺらいやり口です。

エイベックスのような大手であれば、専門の弁理士も存在するでしょうし、世間が騒ぐほど当人達はこの件に関して、動揺はしていないはずです。

トロールビジネスとは

今回のPPAP商標登録横取り問題に関して一部「トロールビジネス」だ、と報道されています。

トロールビジネスとは、商標や特許を直接関係の無い第三者が取得し、本当に使用したい企業や個人からお金を取るようなやり方のことを言います。

実際、マイクロソフトAppleなどもその被害にあっていると報道されています。

しかしビジネスの世界で言う「トロールビジネス」とは、出願されている特許の隙間を縫って新たに特許を出願したり、企業買収などで得た商標権を利用したり、かなり知的で規模も大きいやり口です。

今回のベストライセンス社がやっている、お金をいっさい使わず先願だけを行う、といった単純なものと一緒だと僕は思いません。

特許庁はそんなにバカじゃない

多くの報道で「PPAPピンチ!」とか「ペンパイナッポーアッポーペンはもう歌えない!?」とか言われていますが、その心配はありません。

なぜなら特許庁はそんなにバカじゃないからです。

Apple社のiPhoneの日本の表示名は「アイフォーン」ですが、実は日本には昭和30年代に登録商標として認定された「アイホン株式会社」という愛知の会社があるんですね。

Appleは日本でのiPhone発売に関して、この「アイホン株式会社」に「アイフォーン」の名称使用料として、ライセンス料金を支払っているというのは有名な話です。

そもそも

アイホン

「アイフォーン」

は違う言葉じゃないか、と思う方もいると思いますが、日本の商標に関しては「類似商標」という概念もあります。

本来Appleとしては、ライセンス料金など払いたくは無いはずです。

実際に「アイフォーン」の登録出願も含めて様々な事を試したはずです。

しかし特許庁の判断を加味しても、新たな商標を取得するには難易度が高いと判断した結果「アイホン株式会社」にライセンス料を支払う判断をしたのだと推測されます。

あのApple社が、しかも自社開発の世界でも最も有名となった製品でさえ、特許庁は簡単には商標出願を通しません。

商標登録は、確かに誰でも出願できて、早いもの順に審査がされます。

しかし、その審査が通るか通らないかはまったく別な話なんですね。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

今回の「PPAP商標登録横取り問題」。

ワイドショーなどでのパネラーは

「早い者勝ちなんておかしすぎる!」

「はやく法律を変えろ!」

とか言っていますが、それはちょっと違うような気がします。

確かに今の仕組みでは、ベストライセンス社の上田氏のような行為を働くものが出て来てもおかしく無いですが、彼のような単純な手法では騙される人はなかなかいないでしょう。

その証拠に、万が一彼のやっている手法が「合法でまっとうなビジネス」であれば、彼の会社はもっと大きくなっていて、彼自身がワイドショーのインタビューに道ばたで答える必要なんて無いような気もします。

いずれにせよ、ひとのフンドシで相撲をとっていてはいつまでたっても豊かにはなれません。

上田氏は、今回の件で一躍時の人になってしまいましたが、そのおかげで彼は同様の手口を繰り返せなくなる可能性が充分にあります。

インタビューの中で「ビジネス」というワードを連呼していた上田氏ですが、本当のビジネスをしてきた人であれば、ビジネスはそんなに甘い物じゃないと思うはずです。

弁理士になるくらいの頭があるのならば、もっと世間の役に立つようなことに使って欲しいと思うのは僕だけでしょうか?